豊かさの精神病理

豊かさの精神病理 (岩波新書)

豊かさの精神病理 (岩波新書)

割とホラー 読めば読むほど、自分にブーメラン
精神科の医師である著者の元に相談に来た患者のエピソードを、「モノ語り」というキーワードを中心にまとめている本書 それぞれの患者が著者の診療所に受診しにくるのですが、大半の患者は自分の何が原因で診察所に足を運んでいるのか分かっていません、その患者の葛藤を著者は診察室での会話の中から分析し、的確に質問を繰り返すうちに、患者は何について自分は悩んでいたのかに気づきます。 その展開が実に鮮やかで、推理小説を読んでいるような気分にさせてくれます。 著者は一流の精神科医でありながら、その体験を非常に巧みに文章に落としこんでいると思う
1990年発行の本書に登場する患者は、丁度バブルの時期に重なる人たちなのかと思います。 20年近くたった今ですが、モノに対する考え方の潮流は変わっていても、本書に登場するような悩みや葛藤を抱えた人は同じように存在していると思うし、それが自分ではないと言い切れないのも事実 そういった点でホラーと表現しました 自分の思考について、第三者的視点で考えたい時におすすめの一冊かもしれません